選手から見たNCAA、アメリカスポーツ界、スポーツ留学とは その1

先日10月15日に、「選手から見たNCAA、アメリカスポーツ界、スポーツ留学」というテーマのセミナーを、アスリートブランドのプログラム参加生および資料請求者向けにクローズドで行いました。

セミナーはパネル形式で、登壇者は、NCAAディビジョン1 ジョージア大で全額奨学金を受けテニス留学をし、在学中に全米大学選手権ダブルスで準優勝、ダブルスランキングでは一時全米ランキングトップに上り詰めたという素晴らしい実績を持つ小和瀬麻帆さんをメインパネリストでお迎えし、途中から同じくNCAAディビジョン1所属セントボナベンチャー大学から全額奨学金を受け、野球留学をしてい寺嶋大賜君をスペシャルゲストとして参加してもらいました。

小さな会場でしたが、それでも25名を超える方が集まり、会場は満員で熱気を帯びてました。

 

スポーツビジネス界では日本版NCAA設立の動きが進んでいるなどNCAAがホットワードになっている昨今ですが、

実際にアメリカアマチュア最高峰のNCAAディビジョン1で全米大会準優勝含めた、NCAAの現場の話の選手目線でいろいろ語ってもらいました。

実はこの会の前に7月に、KEIO SPORTS X(  http://sportsx.info/schedule2017/#day2 )で小和瀬さん、NCAAディビジョン1で学問も素晴らしいコロンビア大でプレイをした松井啓十郎(バスケットボール日本代表、Bリーグシーホース三河)、アメリカの大学で野球をし、MLBドラフトで指名された鷲谷(元MLBナショナルズ傘下マイナー)の御三方を招いてパネルディスカッションが行われました。

以下にはその7月のパネルディスカッション時、そしてその事前打ち合わせ時に小和瀬さんに伺った話もあわせてまとめて、ご紹介させていいだきます。

 

Qアメリカに行きたいと思ったきっかけは

(小和瀬さん)5〜10歳でタイに在住していた時に、鈴木修平さん(現在ATPのトレーナーとして活躍中)が海外の大学に進学したこともあり、留学に憧れをもちました。その時からはアメリカの大学へ留学するのは漠然とした夢でしたが、中学卒業が目前となった時に、それが徐々に目標に変わり、高校2年生にはそれが「目指す進路」になりました。

 

Q大学のテニスシーズンでの様子について教えてください。

(小和瀬さん)アメリカの大学はシーズン制。テニスは春がシーズン。

NCAAのテニスの公式戦は、団体戦がメインです。1-2月はインドア。アウトドアでのカンファレンスのリーグ戦=チーム対抗戦(3~4月)は、金曜日、日曜日で試合があり、リーグ内で総当たりをします。SECというジョージア大の属するカンファレンスでのライバルはフロリダ大でフロリダ大のチームカラー青とオレンジを見るだけで闘志が沸く時期もありました笑。カンファレンスのホームアンドアウェイは隔年ごとに行われます。

シーズンの最後にあたる5月は、団体戦のトーナメントと全米選手権(NCAAトーナメント)という個人戦(シングルスとダブルス)のトーナメントがあります。個人戦の全米選手権に出るためには、リーグ戦での結果がランキングに反映され、ランキング上位者が選抜方式で出場します。

 

Q全米トーナメントでは準優勝でしたがランキングの最高順位は

(小和瀬さん)シングルスの最高ランキングは13位。ダブルスでは全米1位にまで上り詰めました

 

Q例えば、野球やバスケ、フットボールなどのチームスポーツは公式戦シーズンは年1回で公式戦シーズン以外には公式試合はないが(エキジビションや練習試合はある)テニスは公式戦シーズン以外にもいろいろ試合があると伺いましたが

(小和瀬さん)その学校のコーチの方針、意向によりますが、秋に個人ベースでトーナメントに5~7大会程度参加します。場合によってITAやプロの大会。またコーチが連れていく大会に行くようなパターンもありますが少数派かもしれません。

私自身が、4年でこなした試合数は300程。1年の秋の大会で好成績を上げITA(Intercollegiate Tennis Association)のポイントが大幅アップしました。

Q夏休み期間はいかがでしたか

(小和瀬さん)NCAAの公式戦は5月で終わり。それ以降が夏休み。夏休みの期間中はコーチから強制はできないので、選手の意志で夏の過ごし方を選択することができます。たまにヨーロッパ行って試合する選手もいます。アメリカは夏の間も授業が開催されています。私は、試合がある秋学期、春学期はなかなか難しいクラスや宿題が多いクラスはあまり取れないので、夏の間に単位を取る時間にあてました。また、夏学期に海外留学させるジョージア大学主催のプログラムがあり、イギリスへ夏の間だけ留学した時期もありました。なんとその費用も奨学金がカバーされるのです。

 

Qアメリカと日本では練習に対する考え方が違うみたいですね

(小和瀬さん)アメリカは基本、個人が自立しています。そして結果主義。練習も決められたものをやるのでなく、コーチから「何の練習をしたい」と聞かれ、自分で「こうしたい」と言って行う感じです。プロになったら自分でやらないといけなくなるのでその点でプロを目指している選手にも向いてるかと思います。

 

Q話をちょっと戻しますがどうやってジョージア大学に。

(小和瀬さん)アメリカの大学に行きたいと決まってから、トミー嶋田さん(日本代表男子コーチ)につながり、各大学にDVDを送りました。嶋田さんがサウスカロライナ州のヒルトンヘッドにいたので、高校3年生の3学期(1~2月)にヒルトンヘッドにあるアカデミーに滞在をして英語を勉強しながら、半日はテニスのトレーニングを行い、その際にいくつかの大学のスカウトに来てもらい、実際のテニスを見てもらいました。

その後オフィシャルビジット呼ばれるNCAAルールで大学訪問が認められる期間に、誘いのあった大学5校を2-3月にかけて訪問しました。その5校とはサウスカロライナ、TCU(テキサスクリスチャン)、ミシシッピ、メリーランド、ジョージアでした。

その中で、トフルのスコアは必要ないと言われたのがTCU、メリーランド大の二校でした。

ジョージアに決めた理由はオフィシャルビジットで惚れ込んだため、施設や待遇はテニスの選手としては全米でトップクラスだったためです。

そうなると問題はトフル。その時点ではすでに勉強をしていたものの、実際に準備を始めたのは夏の大会が終わってから。高3の秋に最初に受けた時は22点でした。ジョージアに決めた時点はもう少しスコアは上がっていましたが、あと数か月で基準点を突破しなければならず、正直実現できるか不安でした。突破できなかったら、秋からはチームに入れない=テニスはできない。でもコーチは点数が取れるまで待つ(=1月入学でもいい)、と言ってくれていました。

 

Q NCAA ディビジョン1のジョージア大や奨学金についてもう少し教えてください

(小和瀬さん)ジョージア大のテニス部員は全部で7〜9名。公式戦メンバーの登録は8名ちょうど。他の大学でも部員は大体8名~12名ぐらい。NCAAの規定で女子のテニスは8名分スカラーシップの枠がもらえますが、ジョージア大は女子8名全員フルスカラシップをもらいます。その8名で6の出場枠を競います。さらに6名に入っても、誰が1番手になるかの争いがあります。1番手は相手の大学のベスト選手と対戦するので、上を目指す選手はやはり相手のエースとやれる1番手を目指します。一方男子は奨学金枠は4.5名。部員は6名。4.5名分の奨学金枠をめぐる熾烈な争いがあります。

 

 

施設面では、ジョージア大のテニスコートは16面。14名で16面一人1面以上ある贅沢さ。

ジョージア大は観客席も整い、応援がすごい。3000人から、全米大会の決勝の時は6000人の観客が集まりました。(全米大会会場は各大学で行われる)

テニスで、それも大学の試合で6000人の観客というのは本当にすごいと思います。

テニス部がカンファレンスチャンピオンになった時は、ジョージア大のフットボールの公式戦の試合前に9万2千人の満員の観客の前で表彰を受けたりもしました。

 

Qジョージア大では他のスポーツも見たりしたそうですが

(小和瀬さん)ジョージア大学時代は、他のスポーツも見て、見るスポーツの楽しさも覚えました。アメリカの大学生は他のスポーツを見に行ってクラスメートやほかのアスリートを応援する習慣があります。応援する側が楽しみになるようなプロモーションしています。例えば、フリーTシャツ、フリーピザ等。また大学専用TVチャンネルがあり、そこでも各部の試合がよく流れています。さらに、他のスポーツを応援したら部にポイントがもらえたりしました。これはアスレティックデパートメントがポイント制を定め、選手たちがボランティア、寄付、ホームレスの家への訪問で、地域社会に恩返しをする活動を促しています。ボランティアでは養護施設に行ったり、家を作る手伝いなどもしました。年度末の全アスリート向けのパーティーで、そのポイントが最も高いチームへの表彰がありました。そういった活動のせいか、大学アスリートは地元の憧れの存在となっているのを感じました。

 

第二回に続く

 

僕も私もアメリカの大学でスポーツ留学したい→ アスリートブランドスポーツ留学

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